尾行

正直なところ尾行調査というのはかなり不得意です。技術としてはカバーしておく必要があるか、もしくは得意な人材に協力してもらうかしなければならないのでしょうが、いまだに中途半端なままです。
今回は調査自体が極秘ということもありますので、「観察」して情報を補強しなければならないようです。そこで不得意ではありますが尾行を始めました。
すると、発見されたさまざまな事実を裏付けるように、ランデブーしている現場を見ることができました。男性の会社からはルートとしては少し離れたところで、しかし堂々と待ち合わせてました。しかし、待ち合わせているときの挙措にも違和感がありました。
恋仲であるようには見えないんですよ。
尾行は不得意ですが、ソーシャルエンジニアリング的側面から人間観察はいろいろやっています。根本的なところは勘ということになるんですが、それにしてもおかしいように思えます。予断は禁物ですが、女性にコントロールされている感じがします。
何か布石を打たないとこれ以上の調査は難しいような感じになってきました。

背景調査

もともと男性社員が所属している会社というのは社内の情報管理がかなり厳しい会社で、社内から情報を出す場合には煩雑な手続きを経ないとならないようです。見積書というのはその中でも比較的簡単に出せる文書で、ルールとしても事前に金額などのネゴシエーションがあればあとはCC(カーボンコピー)で出せば良い、ということになっていたようです。この男性社員もそれに準じて、きちんと金額のネゴも取っていたらしいのですが、それを突破口のようにして、見積書の発信がかなり多くなっていました。それを不審に思ったので調査を依頼してきた、ということです。
この調査自体は極秘にすべし、ということが依頼主のご要望でしたので、残念ながら男性社員のPCを調査するわけにはいきません。そこで、さらにかれの背景について依頼主からヒアリングしました。
かれは病気の奥さんが居て、とても良く面倒を見る模範的な夫であるようです。そんな模範的な人が愛人?というところが違和感をおぼえますね。世の中はそういうものだ、という言い方もできますが・・・
もっと違和感があるのは、やり取り(というより一方的に発信ですね)されている恋文の文面があまりに無邪気に見えるところですね。病気の奥さんが居て浮気、というと、もっと深刻であっても不思議はないというか。しかし、ただ軽く、逢瀬の約束を交わしているだけのように見えます。罪悪感も無いように。
もう少し掘り下げて調べる必要がありそうです。

ごく普通の恋文のやり取り

隠し文字フォントによっていろいろと情報が書かれていましたが、そのほとんどはデートの約束や、デートの感想などでした。文章自体にはおかしなところは無さそうでしたが、予断せずに少し冷却しておいて、間を空けてから再度読んでみることにしました。

隠し文字ファイルでのやり取り

文章は恋人たちのやり取りでした。
ファイルを持ち込んだ依頼人の話では、どうもある男性社員が取引先の女性社員と深い仲になったらしく、その二人の間でやり取りされていたファイルが少し気になったので持ち込んだのだそうです。
気になったのは見積書の数だそうです。その取引先とはあまりそういうやり取りをするような関係ではなく、しかも男性社員はその取引先とはほとんど絡んでいなかったとのこと。確かに頻度から見るとおかしな感じです。しかし、文章を一見する限りでは、特に暗号を用いているとかでもなさそうです。
こういうときは実は男性社員のPCを直接調べるのが早いんですが、調査は極秘、ということでしたのでそれもできないようです。ただ、依頼主の会社では、かなり厳しいセキュリティ管理、情報漏洩対策などを講じているようで、必要ならば各種のログは揃えられる、という話でした。
次回はログを持ってきていただくことになりました。こちらは次回までにもう少しファイルについて調べることにしました。

隠し文字のファイル

マイクロソフトのワードのファイルが一つ、依頼者から渡されたデータです。内容は何の変哲もないただの見積書です。金額も普通で、ちょっと高めではあるけれどどこにでもありそうな案件、金額で、特別目に付くところはありません。
ファイルシステムの状態や、ディスクの中身とか、そういうもの一切無しで、ただのファイルだけを渡されたわけですが、こういうのは実はあまり無いケースです。普段はコンピュータそのままか、ハードディスクそのまま、という持ち込み方が多いんですが。
ファイルを詳しく調べてみると、隠し文字フォントで書かれた文章が存在することがわかりました。